レモンテスト・目的効果基準とは?わかりやすく解説【政教分離】

憲法訴訟
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本記事では、政教分離原則違反が問題となる際に、その判断基準として用いられる「レモンテスト」と「目的効果基準」について解説します。

(※なぜ政教分離原則が必要となるのかについては、別記事で詳しく解説しています。)

レモンテストとは何か?

政教分離原則違反が問われている公権力の行為について、
①目的が、世俗的でなく宗教的なものか
②効果が、宗教を援助・助長・促進・圧迫・干渉等をもたらすものか
③宗教との過度の関わり合いを持っているか
の①~③のうち、一つでも充たされれば政教分離違反となる。

そもそも、「レモンテスト」とは、アメリカの連邦最高裁が、公権力の行為について政教分離違反が問われている場合に、政教分離違反に当たるか否かを判断するために用いる基準です。

レモンテストでは、以下の3つの点において審査を行い、政教分離違反か否かを判断します。

目的が、世俗的でなく宗教的なものか
効果が、宗教を援助・助長・促進・圧迫・干渉等をもたらすものか
宗教との過度の関わり合いを持っているか

そして、①~③のうち、一つでも該当すれば政教分離違反であるとします。

つまり、例えば、当該公権力の行為の目的が世俗的なものであれば、②③を充たさなかったとしても政教分離違反であるとされます。

このように、①~③の一つでも満たさなければ政教分離違反となってしまい、このテストをクリアするのは難しく、レモンテストは厳格な審査であるといえます。

これは、人権保障の中でも、政教分離原則が高い価値であると考えられているためです。

ただ、これはアメリカにおいて用いられている手法であり、日本においても、似たような基準である「目的効果基準」が用いられています。

しかしながら、「レモンテスト」と「目的効果基準」は似て非なるものであり、両者にどのような違いがあるのか検討していきましょう。

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目的効果基準とは何か?

政教分離原則違反が問われている公権力の行為について、
①目的が、宗教的意義を持つものか
②効果が、宗教に対する援助・助長・促進・圧迫・干渉等になっているか
のうち、①と②が両方充たされてはじめて違憲となる。

政教分離違反が争われる際、日本においては「目的効果基準」が用いられることがあります。

目的効果基準では、以下の2点について審査を行い、政教分離違反か否かを判断します。

目的が、宗教的意義を持つものか
効果が、宗教に対する援助・助長・促進・圧迫・干渉等になっている

これは、一見すると、レモンテストとよく似ています。

しかし、目的効果基準では、①と②の両方の要件を充たして、はじめて政教分離違反となります

レモンテストでは①~③の要件のうち、一つでも当てはまればアウトでしたが、目的効果基準では①と②の両方を充たしてアウトになります。

また、レモンテストは3つの要件がありましたが、目的効果基準は2つの要件です。

ですから、レモンテストと違い、政教分離違反であるとされにくく、目的効果基準は緩やかな審査だといえます。

では、目的効果基準は、日本の最高裁において、実際にどのように適用されたのでしょうか。

目的効果基準を採用したとされる津地鎮祭訴訟最高裁判決愛媛玉串料訴訟最高裁判決から検討していきます。

津地鎮祭訴訟最高裁判決

目的効果基準を初めて採用した判例として、津地鎮祭訴訟最高裁判決(最大判昭和52・7・13)があります。

この事件では、津市が主催した津市体育館の起工式において、神式の下で地鎮祭が行われ、その費用に公金が支出されたことについて、違法性が争われました。

つまり、市が主導して、地鎮祭という宗教的な行事を行ったことが、政教分離違反となるのではないかということが問題となりました。

これについて、最高裁は、以下のように述べました。

「憲法20条3項……にいう宗教的活動とは、前述の政教分離原則の意義に照らしてこれをみれば、およそ国及びその機関の活動で宗教とのかかわり合いをもつすべての行為を指すものではなく、そのかかわり合いが右にいう相当とされる限度を超えるものに限られるというべきであつて、当該行為の目的が宗教的意義をもちその効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいうものと解すべきである。」

そして、これを当該事件に当てはめると、地鎮祭は世俗化しているとの理由で、その目的宗教的意義を持たないとしました。

また、効果においても、宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等にはならないとしました。

したがって、目的効果基準を初めて用いた津地鎮祭訴訟においては、目的・効果ともに政教分離違反とはならないとの判断が下されました。

愛媛玉串料訴訟最高裁判決

また、目的効果基準を採用した、もう一つ有名な判例が、愛媛玉串料訴訟最高裁判決(最大判平成9・4・2)です。

この事件では、愛媛県知事が、護国神社・靖国神社における例大祭に際して、玉串料と称して県の公金を支出したことが、政教分離違反となるのではないかということが争われました。

これについて、最高裁は、以下のように述べました。

県が特定の宗教団体の挙行する重要な宗教上の祭祀にかかわり合いを持ったということが明らかである。そして、一般に、神社自体がその境内において挙行する恒例の重要な祭祀に際して右のような玉串料等を奉納することは、建築主が主催して建築現場において土地の平安堅固、工事の無事安全等を祈願するために行う儀式である起工式の場合とは異なり(=地鎮祭の場合と異なり)、時代の推移によって既にその宗教的意義が希薄化し、慣習化した社会的儀礼にすぎないものになっているとまでは到底いうことができず、一般人が本件の玉串料等の奉納を社会的儀礼の一つにすぎないと評価しているとは考え難いところである。そうであれば、玉串料等の奉納者においても、それが宗教的意義を有するものであるという意識を大なり小なり持たざるを得ないのであり、このことは、本件においても同様というべきである。」

すなわち、目的効果基準を採用したうえで、目的については「県が特定の宗教団体の挙行する重要な宗教上の祭祀にかかわり合いを持ったということが明らか(=宗教的)」であり、その効果についても「それが宗教的意義を有するものであるという意識を大なり小なり持たざるを得ない(=宗教的意義を有するという意識を持つ)」ことから、政教分離違反になるとしました。

したがって、目的効果基準を採用したうえで、目的・効果の両方がアウトであったことから、政教分離違反となると判断しました。

愛媛玉串料訴訟最高裁判決においては、目的効果基準を採用したものの、アメリカの連邦最高裁のいう「エンドースメント・テスト」を参照したのではないかといわれています。
エンドースメント・テストとは、「一般人から見て、当該公権力の行為が、特定の宗教をエンドース(後押し)しているとの印象を持つかどうか」を判断基準にするものです。
愛媛玉串料訴訟最高裁判決においては「一般人が本件の玉串料等の奉納を社会的儀礼の一つにすぎないと評価しているとは考え難いところである。そうであれば、玉串料等の奉納者においても、それが宗教的意義を有するものであるという意識を大なり小なり持たざるを得ない」と述べ、一般人の受ける印象を基準としています。
このことから、愛媛玉串料訴訟最高裁判決は、目的効果基準を前提としつつもエンドースメント・テストを参考に判決を下したと考えられます。

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まとめ

レモンテスト
政教分離原則違反が問われている公権力の行為について、
①目的が、世俗的でなく宗教的なものか
②効果が、宗教を援助・助長・促進・圧迫・干渉等をもたらすものか
③宗教との過度の関わり合いを持っているか
の①~③のうち、一つでも充たされれば政教分離違反となる。(=厳格な審査基準

目的効果基準
政教分離原則違反が問われている公権力の行為について、
①目的が、宗教的意義を持つものか
②効果が、宗教に対する援助・助長・促進・圧迫・干渉等になっているか
のうち、①と②が両方充たされてはじめて違憲となる。(=緩やかな審査基準

◎目的効果基準を採用した判例
1:津地鎮祭訴訟最高裁判決
2:愛媛玉串料訴訟最高裁判決(←ただし、エンドースメント・テストを参照?)

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