中国の「国家情報法」とは?その危険性は?わかりやすく解説

政治
スポンサーリンク

近年、アメリカと中国の関係は著しく悪化しています。

そんな中で、アメリカをはじめとする自由主義諸国が警鐘を鳴らしているのが、中国に存在する「国家情報法」のリスクです。

本記事では、中国の「国家情報法」がどのような法律なのか、また、その危険性について取り上げます。

「国家情報法」とは何か?

「国家情報法」とは、「国の情報活動を強化、保障し、国の安全と利益を守ることを目的とする」法律。

中国製通信機器・通信サービスを使うべきではないと言われる理由は、実は、「ハード的なリスク」でも「ソフト的なリスク」でもありません。

中国製通信機器・通信サービスには、深刻な「法的リスク」が存在するのです。

その深刻なリスクとは、「国家情報法」という中国の法律です。

この法律は、「国の情報活動を強化、保障し、国の安全と利益を守ることを目的」としています。

これだけを見ると、一見、どこの国にもありそうな法律です。

では、「国家情報法」のどの部分に、法的リスクが存在するのでしょうか。

「国家情報法」のリスク

「国家情報法」第7条

「国家情報法」の最大の懸念点は、「国家情報法」第7条にあります。

いかなる組織及び個人も、法律に従って国家の情報活動に協力し、国の情報活動の秘密を守らなければならない。国は、そのような国民、組織を保護する。

中国「国家情報法」第7条

同法第7条によれば、中国の国民や組織は、中国政府の情報活動に協力する義務があるということが示されています。

これは、すなわち「中国国民・中国企業は、中国政府の指示があればスパイとして活動する義務がある」ということです。

(これについては、以前の「HUAWEI製品を使ってはいけない理由」の記事でも解説しました。)

中国国民・企業は、「国家情報法」第7条によって、中国政府によるスパイ活動の命令を拒否することができないのです。

井形彬多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授は、同法の仕組みを「たとえば、中国製のサービスを使用して中国に不利益な活動をする人物を中国当局がテロリストと認定すれば、サービス運営者はこの人物の情報を提出するよう求められる。運営者はおそらく中国企業として拒否できない」と述べています※。

(※朝日新聞デジタル2021年4月12日「見えぬ中国の「情報」リスク LINEが突きつけた問い」より)

情報流出の危険性と対策

先日も、コミュニケーションアプリのLINEをめぐっては、ユーザーの電話番号や本名などの個人情報が、業務委託先の中国・大連の拠点にいる中国人技術者から閲覧可能だったことが分かり、国民からはサービスの利用を不安視する声が多く上がりました。

日本で最も利用者の多いコミュニケーションアプリにおいてこのような事態が発覚したことは、安全保障上、極めて重大な問題といえるでしょう。

いまやLINEは、仕事の連絡や公共サービスの利用にも使われるようになり、インフラとしての機能を担っています。

中国政府からみれば、LINEに登録した個人情報はいわば「宝の山」であるにもかかわらず、LINEは「国家情報法」のリスクを軽視しており、意識の低さが露呈した最悪のケースといえます。

では、個人がリスクを回避するためには、どうすればよいのでしょうか。

もちろん、「そもそもLINEを使わない」など、「国家情報法」のリスクが存在する通信機器・通信サービスを使わないことが確実です。

しかし、これはあまりに非現実的です。

メール・電話を使う世代であればまだしも、若者にとって、LINEは人とつながるための不可欠なツールです。

また、どこの国にデータを保管しているかについてまで公表している企業は少なく、そのリスクを完全になくすためには「インターネットを使わない」ことくらいしかできません。

ですから、リスクから自らの情報を完全に守ることはほぼ不可能です。

そのような中において、少しでもそのリスクを低減するためには、不用意に「中国製の通信機器・通信サービス」を使わない心がけが必要です。

例えば、「生活に欠かせないLINEはやむを得ないにせよ、tiktokなど、生活に不可欠でないサービスは極力登録しない・捨てアカウントで登録する。

スマートフォン・パソコン等、通信機器の購入に際しては、中国製でないかを確認する。」

などであれば現実的です。

そして、これらを対策することで、自分だけでなく、他者を守ることにもつながります

例えば、中国製のスマートフォンを使っていた場合、これらに紐づいた他者の情報も危険にさらされることとなります。

よく、「自分の情報が抜かれたところで、何の価値もないし平気だ」という人がいます。

しかし、問題はその本人の情報だけでなく、「連絡先」に入っている友人・職場の情報、スマートフォンのカメラ機能・録音機能を用いたスパイ活動など、他者の情報も流出する恐れがあることです。

自分が加害者側にならないためには、そのリスクを認識し、今一度、身の回りの通信機器や通信サービスを見直す必要があるのではないでしょうか。

スポンサーリンク

中国政府の反論

この「国家情報法」第7条の懸念に対し、中国政府の反論があります。

それが、「国家情報法」第8条です。

国家情報活動は法に基づき行い、人権を尊重及び保障し、個人及び組織の合法的権益を守らなければならない。

中国「国家情報法」第8条

つまり、中国は「国家情報法」を適用するにあたっても、人権や個人・組織の合法的権益を守るというのです。

しかし、これを信用する者は皆無でしょう。

中国政府は、これまでも、人権を無視してきた”前科”があるからです

香港では、イギリスとの約束を破り「一国二制度」を形骸化させ、「国家安全法」により民主主義や自由を奪い去りました。

ウイグル人に対する非人道的な扱いに対しては、「中国政府は現代版ナチスである」といわれるほどです。

台湾に対しても武力での統一をもくろみ、批判対しては「内政干渉である」との定型文で一蹴しています。

このような、度重なる人権軽視姿勢を貫く中国政府の”人権尊重”を誰が信用するのでしょうか。

第8条は、「国家情報法」に対する批判をかわすためだけにつくられた、無意味な条文だと捉えるべきでしょう。

スポンサーリンク

まとめ

・「国家情報法」とは、「国の情報活動を強化、保障し、国の安全と利益を守ることを目的とする」法律

・「国家情報法」第7条により、中国の国民や組織は、中国政府の情報活動に協力する義務がある


中国製スマートフォンにおける、より具体的なリスクについてはこちらの記事をご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました