アメリカと中国の対立が深まる中、HUAWEI(ファーウェイ・華為)社がモバイル事業から撤退する可能性があるとのニュースが飛び込んできました。
8月30日、Apple製品などスマホ情報に精通するアナリスト、ミンチークオ氏(Ming-Chi Kuo)氏が、「天風国際証券(TF International Securities)」のWeChat公式アカウントにて、ファーウェイのサプライチェーンに関する分析レポートを発表した。 それによると、「9月15日以降、ファーウェイはスマートフォンの部品を調達できるかどうかに関わらず、競争力と市場シェアで影響を受ける。最低でも市場シェアが減少し、最悪の場合は携帯電話市場から撤退することになるだろう」という。
「ファーウェイ、米禁止令が発効される9月15日以降、携帯電話事業から撤退の恐れ」
https://news.yahoo.co.jp/articles/dbd0b065a210c005bee578fa182a0fe6f37ab20a
本記事では、HUAWEIのスマホ事業撤退を中心に、今後の中国製スマートフォンの展望と日本のとるべき対応を検討していきます。
HUAWEI締め出しへ舵を切ったヨーロッパ
アメリカでトランプ大統領が就任して以降、米中関係は悪化の一途をたどりました。
米中対立が今ほど深刻化していない中、トランプ大統領が打ち出したのは、HUAWEIとZTEの締め出しでした。
これについて、当初は、日本やヨーロッパは「自由貿易」を強調し、アメリカとは一定の距離を置く政策をとっていました。
ところが、この流れを大きく変えたのが、新型コロナウイルスの拡散です。
これまで、中国への批判を抑えていたイギリスやフランスも、アメリカと同調する動きを見せ始めました。
日本においても、若者に人気の動画投稿アプリTikTok(ティックトック)への規制の議論が始まるなど、中国に対する警戒感が高まっています。
もちろん、これまでと同様、日本もヨーロッパも「自由貿易」を前提とし、アメリカの保護主義的な動きには同調していません。
しかし、「中国への警戒感」の高まりという点で、西側諸国は一致しつつあり、中国にとって大きな打撃となるでしょう。
アメリカに依存しきっていたツケ
HUAWEIがスマホ事業を撤退せざるを得なくなったのは、ハードとソフトの両面で、アメリカに依存しきっていたことが挙げられるでしょう。
部品調達においては、アメリカあるいはアメリカの同盟国に依存しきっており、ハード面での調達元は限られるようになってしまいました。
また、ソフト面でも、HUAWEIは、米・Google社が開発するOSのAndroidを使い続けていました。
ですから、HUAWEI製品へのAndroidの配信停止は、直接的な打撃となりました。
HUAWEI社も、独自のOS(ハーモニーOS)を開発していますが、android・iosに次ぐ第三のモバイルOS市場を作り上げることは、相当に困難です。
これまでも、Microsoft社のWindows 10 MobileやFirefox OSなどの開発はみられましたが、結局のところ、第三のOSはことごとくつぶされていきました。
アメリカを敵に回したことで、自ら自身の首を絞めている中国は、今後、どのようなスマホ事業を展開するのでしょうか。
中国製スマートフォンの展望
中国製スマートフォンといえば、HUAWEIやZTEを思い浮かべる人が多いと思いますが、他にも、近年シェアを伸ばしてきているメーカーは多くあります。
OPPOやXiaomi、Lenovoなどは、モバイル事業にも力を入れ、世界的にもかなりのシェアを占めるようになりました。
ですから、HUAWEIを締め出したからと言って、中国製通信機器のリスクがなくなるかといえば、そうではありません。
中国製通信機器のリスクについては、以下の記事で詳しく説明しています。
今後も、HUAWEIに限らず、これらのメーカーへの制裁が行われる可能性は十分にあります。
アメリカは、これらのメーカーへの制裁を「外交カード」としてとっておいているとも想定されます。
中国製スマートフォンが、HUAWEIと同じ道をたどることになるのか否かは、今後の米中関係次第とみてよいでしょう。
日本も中国製スマートフォンを締め出すべきか?
では、米中関係が悪化する中、日本はどのような立場をとるべきなのでしょうか。
これについて、日本は、西側諸国と歩調を合わせるべきだと考えます。
すなわち、欧米諸国と同様に、HUAWEI排除へ、足並みをそろえる必要があるということです。
これには、日本は、東西どちら側にもつかず、仲介役を務めるべきだとの批判もあるでしょう。
しかし、日本には、アメリカ軍が駐留し、安全保障もアメリカに依存しきっています。
アメリカとの関係が、日本の安全保障を直接的に左右するわけですから、アメリカ側につかざるを得ません。
日本が中国に良い顔をしていれば、アメリカとの関係が悪化しても、中国に攻撃されることはないとの批判もあるかもしれません。
しかし、日中関係が改善したといわれる中においても、現に、中国は尖閣諸島への挑発を続けています。
このような中、中国に攻撃されないという幻想を抱くよりも、現実的に、アメリカとの連携を強化するほうが、日本にとって得策であるといえるでしょう。
また、西側諸国の一員である日本は、アメリカだけでなく、イギリスやフランスなどとの関係も重要です。
地理的には非常に遠いですが、「自由・民主主義・基本的人権の尊重・法の支配」といった普遍的価値を共有する国々です。
ですから、権威主義国の抑え込みのためには、これらの国々との連携は欠かせません。
中国という「普遍的価値を共有できない国」に覇権を握らせないためには、西側諸国と協調する必要があるでしょう。