「民事訴訟」や「刑事訴訟」という言葉を知っている方は多いと思います。
その一方で、「憲法訴訟」という言葉は聞き慣れない方も多いかもしれません。
では、そもそも「憲法訴訟」とは何なのでしょうか。
一からわかりやすく解説していきます。
そもそも「憲法訴訟」とは何か?
「憲法訴訟」とは、「憲法にかかわる争点を伴って提起がなされる訴訟」のことをいう。
憲法訴訟とは、そもそも何なのでしょうか。
それを理解するためには、まず、現在の日本の司法権のシステムをある程度理解する必要がありますので、先に見ていきましょう。
日本の司法権のシステム
今現在、日本の司法権のシステムには、「民事訴訟」と「刑事訴訟」しかありません。
民事訴訟・刑事訴訟とは、それぞれ以下のようなものです。
・民事訴訟:私人同士が権利・義務関係を争う訴訟
・刑事訴訟:犯罪を犯したと思われる人について、国が起訴し、有罪・無罪を争う訴訟
そして、民事訴訟や刑事訴訟については、その手続きについて定めた「民事訴訟法」「刑事訴訟法」が存在しています。
ですから、民事訴訟は民事訴訟法に則って行われ、刑事訴訟は刑事訴訟法に則って行われます。
「行政訴訟」も存在しますが、これは民事訴訟に含まれ、「私人」と「行政機関」の間で権利・義務関係を争う訴訟のことを指します。
憲法訴訟とは?
では、憲法訴訟とは何なのでしょうか。
憲法訴訟とは、「憲法にかかわる争点を伴って提起がなされる訴訟」のことをいいます。
もう少し噛み砕いていえば、「民事訴訟・刑事訴訟のうち、当事者によって憲法上の争点が主張された訴訟のこと」を指します。
つまり、民事訴訟・刑事訴訟のように独立したカテゴリーなのではなく、「当事者が憲法上の争点を主張した時点で憲法訴訟にもなる」のです。

したがって、「民事訴訟であり憲法訴訟でもある」「刑事訴訟であり憲法訴訟でもある」という状態になります。
「憲法訴訟法」はない!
先ほど、民事訴訟は民事訴訟法に則って進められ、刑事訴訟は刑事訴訟法に則って進められると述べました。
では、憲法訴訟は「憲法訴訟法」に則って進められるのでしょうか。
そうではありません。
というより、そもそも「憲法訴訟法」という法律は存在しません。
憲法訴訟は、民事訴訟・刑事訴訟の中で当事者が憲法上の争点を主張することによって生ずるものなので、あくまで民事訴訟・刑事訴訟の手続きに則って訴訟は行われます。
もちろん、その中で、憲法訴訟特有の論点も出てきますが、独自の訴訟手続法は存在していません。
まとめ
・憲法訴訟=憲法にかかわる争点を伴って提起がなされる訴訟のこと
・憲法訴訟に独自の訴訟手続法は存在しない