天皇・皇族は「国民」に含まれる?人権はある?わかりやすく解説【憲法学】

憲法
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日本国憲法の第3章のタイトルには「国民の権利及び義務」とあります。

では、天皇や皇族も、「国民」に含まれ、基本的人権の保障を受けることができるのでしょうか。

本記事では、憲法学の観点から、天皇・皇族の人権享有主体性について検討していきたいと思います。

天皇・皇族は「国民」に含まれる?人権はある?

天皇・皇族も「国民」に含まれると考えるのが一般的。
「基本的人権の保障」は受けない。

天皇・皇族について、憲法学では、「国民」に含まれると考えるのが一般的となっています。

そして、「国民」であるということは、憲法第14条によって、一般国民と同様に「法の下の平等」の保障も受けると考えられます。

ですから、天皇・皇族についても、一般国民と同様な扱いをすべきではないかと考える人もいるかもしれません。

しかしながら、憲法自身が、天皇・皇族の世襲制や象徴としての特別な地位を認めています。

例えば、憲法第1条を見てみましょう。

天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

憲法第1条

国民の「基本的人権の保障」の根拠は憲法ですが、その憲法自身が、天皇や皇族に特別な扱いをしているのです。

したがって、「国民」には含まれる一方で、憲法自身が例外として扱っていることから、「基本的人権の保障」は受けないと考えられます。

天皇・皇族は「国民」ではないとする学説も存在します。
この説では、天皇・皇族は「門地」によって「国民」から区別された特別の存在だと考えます。
しかし、この説をとったとしても、「国民」には含まれないと考えるわけですから、いずれにせよ「基本的人権の保障」は受けないといえます。

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天皇・皇族に制限される人権の範囲は?

では、天皇・皇族には、どのような人権の制約があるのでしょうか。

具体的に検討していきます。

A:政治的中立(憲法第4条第1項)→選挙権・被選挙権・政治活動の自由
B:財産授受(憲法第8条)・財産権(憲法第88条)
C:職業選択の自由(憲法第22条第1項の例外)
D:国籍離脱の自由(憲法第22条第2項の例外)

A:政治的中立

天皇・皇族の人権の制約の代表的なものとして、「政治的中立」が求められることが挙げられます。

憲法第4条第1項では次のように規定されています。

天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない

憲法第4条第1項

したがって、政治的中立が求められていることから、選挙権・被選挙権は認められないほか、政治活動の自由も実質的に認められていません

B:財産授受・財産権

天皇・皇族の財産授受・財産権にも制約があります。

まず、財産授受については、憲法第8条に規定が存在します。

皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。

憲法第8条

一般国民であれば財産の授受は当然に認められますが、天皇・皇室は、憲法第8条によって、例外的に制限されているわけです。

また、財産権についても、憲法第88条による制約がなされています。

すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。

憲法第88条

一般国民であれば、自分の物は自由に「使用・収益・処分」できます。

しかし、本条文を見ると、皇室財産については、それが例外的に制限されていることがわかると思います。

C:職業選択の自由

天皇・皇室については、世襲制であることから、憲法第22条第1項の職業選択の自由も否定されることになります。

以前、天皇の「譲位の自由」が認められるか否かが議論になったのは、職業選択の自由に制約があると考えられたためです。

D:国籍離脱の自由

憲法第22条第2項で保障される国籍離脱の自由についても、認められないといえます。

また、A~Dに列挙したもの以外についても、天皇・皇族であるが故の制約は存在します。

まとめ

天皇・皇族も「国民」に含まれると考えるのが一般的。

「基本的人権の保障」は受けない

・天皇・皇族に制限される人権
A:政治的中立(憲法第4条第1項)→選挙権・被選挙権・政治活動の自由
B:財産授受(憲法第8条)・財産権(憲法第88条)
C:職業選択の自由(憲法第22条第1項の例外)
D:国籍離脱の自由(憲法第22条第2項の例外)

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