外国人に選挙権を認めることは憲法違反か?【外国人参政権】

憲法
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本記事は、「憲法上の基本的人権の保障は外国人にも及ぶのか?」を理解した上での議論です。

まだご覧になっていない方は、上記リンクよりご確認ください。

外国人の憲法上の人権の扱いについて理解したうえで、本記事では、具体的にいかなる人権が保障されるのかについて検討していきます。

なぜ、外国人の人権が問題になるのか?

日本人には、そもそも憲法上の人権がすべて保障されているから。

日本人であれば、憲法上の人権はすべて保障されています。一方で、外国人については、性質上、どこまで認められるべきかが問題となります。

その中でも、最も代表的なものは、選挙権です。

外国人に選挙権を認めることは違憲か?

判例によれば、

  • 国政レベル:外国人に選挙権を認めることは違憲
  • 地方レベル:外国人に選挙権を認めても、違憲ではない=立法政策によって認めてもよい

現行法では、選挙権は外国人にも認められる?

まず、選挙権についての根拠条文は、「公職選挙法」という法律にあります。では、公職選挙法上ではどのように書かれているのでしょうか。

1 日本国民で年齢満十八年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する。

2 日本国民たる年齢満十八年以上の者で引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者は、その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。

3 日本国民たる年齢満十八年以上の者でその属する市町村を包括する都道府県の区域内の一の市町村の区域内に引き続き三箇月以上住所を有していたことがあり、かつ、その後も引き続き当該都道府県の区域内に住所を有するものは、前項に規定する住所に関する要件にかかわらず、当該都道府県の議会の議員及び長の選挙権を有する。

4 前二項の市町村には、その区域の全部又は一部が廃置分合により当該市町村の区域の全部又は一部となつた市町村であつて、当該廃置分合により消滅した市町村(この項の規定により当該消滅した市町村に含むものとされた市町村を含む。)を含むものとする。

5 第二項及び第三項の三箇月の期間は、市町村の廃置分合又は境界変更のため中断されることがない。

公職選挙法第9条(選挙権)

公職選挙法を見る限りでは、「日本国民」であることが、選挙権の条件となっています。したがって、現行法の下では、外国人に選挙権を与えることは違法ということになります。

公職選挙法を改正し、外国人に選挙権を与えることは違憲?

では、公職選挙法を改正して、外国人にも選挙権を与えることはできるのでしょうか?

これについて、学説は対立していますが、判例は、国政レベルでは「できない」・地方レベルでは「できる」との立場をとっています(許容説)。

学説・判例の立場が複雑であるため、以下では表を用いつつ解説します。

・まず、禁止説の根拠として、「国民主権」が挙げられます。自国を統治するのは、あくまで自国の国籍を持ったものでなければならず、外国人に選挙権を与えることは違憲だと主張します。

ようするに、「外国籍の者には投票する権利は与えてはいけない」と考えるのがこの説です。


・次に、許容説の根拠として、判例(最判平成7・2・28)の立場を引用すると、「我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて」法律で選挙権を付与することは憲法は禁止していないとしました。

ただし、許容説の立場をとったとしても、国防や外交問題にもかかわる国政については、「国民主権」の観点から認めないとの主張が有力となっています。

ようするに、「地方選挙については、外国人への選挙権付与を、憲法は禁止も要請もしていない」と考えるのがこの説です。


・最後に、要請説の根拠として、「治者と被治者の同一性」が挙げられます。「治者と被治者の同一性」とは、「治める人も治められる人も同じ集団であるべき」だという意味です。

この説をとると、「定住者や永住者は、既に被治者であるにもかかわらず、治者を決める機会がないのは問題である」と考えることとなります。

そのため、憲法は、地方レベルでは外国人への選挙権付与を当然に要請しているとし、国政レベルでは議論が分かれています。

選挙権付与を要請していると考えるわけですから、「現行の公選法は憲法違反だ」との主張も見られます。

ようするに、「憲法は、外国人への選挙権付与を要請している」と考えるのがこの説です。

まとめ

・現行法では、外国人への選挙権付与は認められていない

・公職選挙法を改正して、外国人へ選挙権を付与することは、
  国政レベル違憲
  地方レベル違憲ではない

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